「俳句文法」入門 (34)          
─  助動詞「べし」について  ─               大林明彦

 べしは活用語の終止形に接続する。生くべし。死ぬべし。但しラ変とラ変型の活用語には連体形に付く。有るべし。居るべし。活用は形容詞の型である。

基本形未然形連用形終止形連体形己然形命令形活用形
べしべくべくべしべきべけれ ○形容詞型
べしべからべかり ○べかる ○ ○カリ活用

 ラ変のありと結びついてカリ活用を生じさせる。推量の助動詞「む」の強調が「べし」である。〈あらむ→あるべし→ありぬべし〉と最強調したのが子規の句
「鶏頭の十四五本もありぬべし」の事は既に指摘した。
 べしは確信のある推量・予想である。「…ダロウ…ニチガイナイ…シソウダ」等に訳す。当然・義務の意「…ネバナラヌ…ベキダ…ハズダ」と訳す。適当の意「…ノガヨイ…ノガ適当ダ」。意志・決意「…シヨウ…ツモリダ…ウ」。命令「…シナサイ…セヨ」。勧誘の意「…シマショウ」もある。可能「…デキル」も。
山雨急午後は夏炉を焚くべし伊藤伊那男
 この「べし」はどの意がよいでしょうか。暫しお考えを。訳によって文法的意味は決定します。勧誘意志適当が可か。当然もあり?勧誘「焚きましょう」か。