「俳句文法」入門 (46)
─── 助詞について 其の二「を」と「に」─── 大林明彦
前回格助詞の「が」の同格の例を源氏物語で示しました。源氏物語の現代語訳では与謝野晶子でも谷崎潤一郎でも殆ど同格に訳しています。しかし瀬戸内寂聴の現代語訳では逆接の接続助詞として訳されています。正に現代語の感覚で言えばそうも取れる(しかし平安朝の頃ではそういう使用はないとされる)。解なくて文法的鑑賞なし。寂聴さんのはジャーナリスチックと言えましょう。現代の読者は違和感なく読みすごすでしょう。寂聴の解も捨て難い味があるか。「を」は体言(名詞)・連体形に付く。対象・起点・場所・期間・相手などを表す。(「に」は次回に詳しく)
身を寄せし病後の母に枇杷を剥く布施協一
須磨沖を走る帆影や夏来る松井春雄
天と地を一瞬渡るはたた神坂本幸子
炎天を来て炎天へ宅急便升本榮子
「に」は体言・連体形に付く。原因・理由を表す。
阿弖流為の凱旋に湧くねぶた小屋太田直樹
片陰の暗きに生気取り戻す本間エミ子
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