「俳句文法」入門 (47) 
─── 各助詞「に」について ───         大林明彦

「に」は体言(名詞)と動詞の連体形に接続する。
 ①場所を示す格助詞「に」の例句が圧倒的に多い。
実るまで庭遊ばせ栗南瓜宇井千恵子
海峡の真下釣瓶落しかな阿部月山子
境内隠れクルスや草の花児玉真知子
 ②対象を示す「に」の例も少なくない。…ニと訳。
遠ざかる汽車敬礼鰯雲乾佐知子
灯籠語りかける子御巣鷹忌堀越純
亡き兄供へてぬくき栗ごはん渡辺信子
 ③原因・理由を表す「に」もある。…ノ為ニ…等。
じよんがらの唄はじける鳳仙花升本榮子
草の葉の雨飲みくる昼の虫生江通子
メガホンの声列なす七五三阿部悦子
 その他、時間・方向・目的・手段(方法)・結果・内容・資格(状態)等を表す「に」の用例あり。

 又「に」には強調の用法あり。その場合は動詞の連用形に接続します。「ただ食ひ食ふ音のしければ」(宇治拾遺物語)。強調の格助詞「に」というのが大学入試の答。頻出する時もありました。降り降る。鳴き鳴く。掘り掘る。使い勝手のいいですね。