「俳句文法」入門 (52)
─── 格助詞「から」について ─── 大林明彦
「から」は体言・連体形に接続する。
① 起点を表す。(…から)蜻蛉日記「去年から山籠りして侍るなり」(去年から山籠りをしております)
寒林に歌ふ腹から声出して 高瀬栄子
囀や温泉から見下ろす海の景 広瀬 元
柳から日のくれかかる野路かな 与謝蕪村
②通過する場所を表す。(…から。…を通って)
万葉集「ほととぎす鳴きて過ぎにし岡びから秋風吹きぬ縁もあらなくに」(3946首)
山辺から春風吹きぬ奈良の里 詠み人知らず
③手段・方法を表す。(…で。…によって)
落窪物語「徒歩(かち)からまかりて言ひ慰め侍らむ」(徒歩で参って話をして慰めましょう)
木舟から夏川くだる京の旅 詠み人知らず
④原因・理由を表す。(…のために。…によって)
源氏物語「何心なき空の気色(けしき)もただ見る人から、艶にも凄くも見ゆるなりけり」(帚木)
心から憂しとも良しとも夏の雲 (仮作)
その他並列や比較の基準を表す物もある。万葉人も紫式部も「から」を使用していたのですね。
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