「俳句文法」入門 (58) 
─── 接続助詞「ば」について ───           大林明彦

   文中にあって、活用語に付き、接続詞のように上下の文節をつなぐ助詞を接続助詞という。順接、逆接、単純接続の三つがある。次は順接の仮定条件を表す接続助詞である。
縋るものあら天まで凌霄花坂口富康
刀さげ「よら切るぞ」と勇む案山子青木ひろし
あられせ網代の氷魚を煮て出さん松尾芭蕉
   
順接の仮定条件とは、まだ起こっていない事を仮定して述べる表現。(モシ…ナラ。モシ…タラ。と訳す)活用語の未然形に付く。あら(ラ変・未然形)よら(ラ行四段・未然形)せ(サ変・未然形)加藤楸邨の句「しぶとかるべしこの兜虫声出さ」や小林一茶の句「小言いふ相手もあらけふの月」や松瀬青々の句「雲の峰ほどの思ひの我にあら」なども同様である。順接の確定条件を表す「ば」もある。既に実現している事を前提にして述べる。(…ノデ。…カラ。)
さきがけの曲がれ曲がる蟻の列田中里香
草あれ昆虫採集したがる子角野京子
インターを下りれ故郷銀河濃し守本みちこ
 確定条件の「ば」は已然形に接続する。水原秋桜子の句「人来ね土筆長けゆくばかりかな」や山口青邨の句「みちのくの雪深けれ雪女郎」なども同様である。