「俳句文法」入門 (61) 
─── 接続助詞「ば」について ───           大林明彦

①未然形に接続する「ば」は順接の仮定条件を表す。
(もし…たら。もし…なら。と訳す。)
あられせ網代の氷魚を煮て出さん松尾芭蕉
しぶとかるべしこの兜虫声出さ加藤楸邨
小言いふ相手もあら今日の月小林一茶
②已然形に接続する「ば」は順接の確定条件を表す。
(…ので。…から。と訳す。)
通草の実曳けこぼるる昨夜の雨小野誠一
橋いくつ渡れ消ゆる秋思かな倉林美保
名を呼べ手を上げし子や小鳥来る升本榮子
③又、已然形に接続して偶然条件を表す場合もある。
(…と。…ところ。と訳す。)偶時条件とも言う。
雪舟寺に茶を待ちをれ小鳥来る小野寺清人
遠会釈せむと思へ案山子なり清水恵子
ふり向け色なき風のこゑ聞こゆ田村富子
④已然形について恒時(恒常)条件を表す時もある。
(…といつも。…と常に。…と決まって等と訳す。)
転がれ誰かが拾ふ木瓜の実よ大塚禎子
念力のゆるめ死ぬる大暑かな村上鬼城
みちのくの雪深けれ雪女郎山口青邨