「俳句文法」入門 (62)
─── 逆接を表す接続助詞「ど」「ども」について ─── 大林明彦
文中で上と下の文節をつなぐのが接続助詞である。単純接続と条件接続とがある。前者には「て」「して」「が」「つつ」「に」「を」「で」「ながら」等がある。後者には順接と逆接があり、それぞれ仮定条件と確定条件がある。
「ど」と「ども」は逆接の確定条件である。活用語の已然形に接続する。(…けれども、…のに、…が、等と訳す)
「いとつらくは見ゆれど 、志はせむとす」(土佐日記)
「なんとも薄情だとは見て思うけれども 、お礼はしようと思う」と訳す。「ど」の上は見ゆの已然形である。
若布干す薄ら日なれど磯まぶし泉琴子
薄ら日なのに(逆接の確定条件を表す)磯がまぶしい、と訳せる。「なれ」は断定の助動詞「なり」の已然形。
雲あれど 無きが如くに秋日和松尾芭蕉
雲があるのに 、無いかのように秋日和だ、と訳せる。ラ変動詞「あり」の已然形「あれ」に付いて逆接の確定条件を表している。雲があるのに無いかのように、と逆の内容に続いている。助動詞「ごとくな(ナリ活用型)の連用形が、「如くに」である。比況の助動詞という。「ども」も同じ。
「足ずりをして泣けども、かひなし」(伊勢物語)
泣けが泣くの已然形、泣いたけれども、どうにもならない。
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