「俳句文法」入門 (65) 
─── 間投助詞「よ」「や」「を」について ───           大林明彦 

 文字通り文の間に投げ込む助詞で、呼びかけ・感動・詠嘆・整調・強調などを表す。複合する事多し。
少納言、香炉峰の雪いかならむ。   (枕草子)
人の言ふらむ事をまねびらむ     (枕草子)
をかしの御髪                        (源氏物語)
夢と知りせば覚めざらまし       (古今集)
 順に、呼びかけ、詠嘆、感動、強意とする。詠嘆と感動は略同じだが「あはれ」が漂うのが詠嘆、「をかし」の明るさがあるのが感動と私は読む。強意にも当然詠嘆の要素が加わる。目を覚まさずにいたのになあ 。
海明け出船の汽笛ひびき合ふ大西裕
春めく伝ひ歩きの二歩三歩杉原功一郎
梅東風束子で洗ふ地蔵尊児玉真知子
料峭杣屋の煙折れきたる高井美智子
多喜二忌ロシアの報に息をのみ花里洋子
 切れ字のやは俳句の命。よの例を春耕5月号より。
草木はよ目覚めよと春の雨平照子
チューリップ数へしこゑ保育園青木典子
身にしみる今日の寒さ彼岸まで 田中明美
  目覚め、の はマ行下二段活用の命令形の語尾。