「俳句文法」入門 (7)
─ 上一段と下一段の活用について ─ 大林明彦
上一段活用はイ段音(いきしちにひみいりゐ)に活用し、干る・射る・着る・似る・見る・居(ゐ)る等がある。
ひいきにみゐる ! 他に、煮る・鑑みる・顧みる・試みる・鋳(い)る・率ゐる・率ゐる・用ゐる等。見るは〈み・み・みる・みる・みれ・みよ〉と活用。
水切りの子らを見てゐる徒遍路深川知子
丹波織着る語り部や春愉し山岸美代子
流鏑馬の的射る音や若葉風杉原功一郎
下一段活用はエ段音に活用するが、古典文法では、「蹴る」の一語のみ。〈け・け・ける・ける・けれ・けよ〉と活用する。未然形・連用形・命令形が口語文法と異なり、現在は使用しない。蹴るは口語文法ではラ行五段活用。未然形が蹴らず、蹴ろうとなる。
ボール蹴る遊びのこゑや夏落葉高木良多
蹴は現在では複合動詞として用いられる。蹴飛ばす、蹴破る、蹴上げる、蹴倒す等。この場合の蹴はすべて古語の連用形の蹴である。
蹴散らして水浴ぶ鴉菖蒲池鎌田とも子
「浴ぶ」は「浴ぶる」が正格だが、定型を破るのを避け敢えて終止形にしている。慣用化した破格表現だ。
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