自由時間 (83) 新型コロナウイルスの基礎知識 山﨑赤秋
◆新型コロナウイルス(以下CVと略す)はどのようなウイルスか。
CVは、2002年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こしたコロナウイルスの弟である。どちらもコウモリが宿主であるらしい。違うのは感染力で、SARSは発症した人からしか伝染しなかったが、CVは発症していない人からでも伝染するという厄介な病気だ。それが感染拡大をもたらしている。
ところで、病気を引き起こす微生物には、ウイルスのほかに細菌がある。ウイルスと細菌は似ているようで違う。まず大きさが違う。ウイルスは細菌の50分の1くらいしかない。ウイルスには細胞がないが、細菌には細胞がある。細菌は単細胞生物であり、栄養源があれば自ら増殖していくが、ウイルスは他の細胞に入り込まないと生きていけない。その細胞内で複製を作らせ、細胞を壊しウイルスをばらまき増殖していく。
細菌は抗菌薬(抗生剤、抗生物質)で退治することができるが、ウイルスには効かない。抗ウイルス薬はまだ数えるほどしか開発されていない。
ワクチンの開発が一年半後くらいに期待されているが、それまでは症状を抑える既存の薬を試していくしかない。ちなみに、ワクチンとは、病気にならない程度に弱めたウイルスや細菌をわざと体内に接種し、抗体を作らせ、感染しないようにするものだ。
◆どのようにCVに感染するか。
CVは人から人にうつる。感染した人が、咳をしたり、くしゃみをしたり、話したり、歌ったり、笑ったりしたときに唾が飛沫となって飛び散る。咳では10万の飛沫が2㍍まで飛ぶ。くしゃみでは200万の飛沫が3㍍まで飛ぶという。その飛沫にCVが含まれている。それが感染の源だ。
CVが侵入するのは、粘膜が外気に触れているところ、すなわち口、鼻、眼の三ヵ所である。この三ヵ所からCVが侵入しないように防御することが重要だ。
感染の仕方によって、二つに分けることができる。
①飛沫から直接感染するケース
感染した人と対面していて、そのとばした飛沫が直接、口、鼻、眼に付いたとき。この時は高い確率で感染する。それを防ぐためにできることは、一つは口、鼻、眼をマスクなどで覆うこと。もう一つは、飛沫が届かないように距離をあけること。いわゆる「社会的距離戦略」(よくわからない訳語)、つまり他人から約2㍍は離れること。(同じ方向を向いて列を作っている場合などは、飛沫を浴びる恐れが少ないのでそれほど神経質にならなくてよい。もっとも、急に振り向かれて話しかけられたりしたらうつる恐れがあるから距離を置くにこしたことはない)
一つ注意が必要なのは、エアロゾル感染の恐れがあること。飛沫のうち大きいものはすぐに下に落ちるが、細かい飛沫は、換気の悪い密閉空間では20分ほど空中に漂う。それを吸い込んで感染する恐れがある。
②どこかに付いた飛沫から感染するケース
実験によると、CVは、床などに落ちたものは数時間、プラスチックやステンレススチールの表面では数日間生存する。色々なところに付着していると考えておくのが無難だ。ドアノブ、吊皮、エレベーターのボタン、着衣、マスクの表面、トイレの便座などなど。そういうものに素手で触れて、その手で口、鼻、眼を触るとCVに感染する恐れがある。それを防ぐのは何よりも手洗いだ。
石鹸を泡立て、20秒以上、指の隙間や爪の生え際までまんべんなくこすり、よく洗い流す。手指消毒剤を使ってもよいが、アルコール濃度が60%以上でないと効果がない。ケチらないでプッシュを最後まで押してたっぷりと手にこすりつけ乾かす。
とにかく、口、鼻、眼を触ろうとしかけたとき、手を洗ったかどうかを必ず思い出すようにしよう。
◆マスクを使いはじめた欧米人
ニュースで、イタリア人の老婆が、生れてはじめてマスクをしたわ、と言って笑っていたが、一般の欧米人はあまり使うことがなかった。それが、マスク、マスクと騒ぎ出したのは、感染症対策については世界に冠たるアメリカのCDC(疾病管理予防センター)が感染拡大を防ぐためにマスクが役立つとしてからだ。
それは、CVに感染しても症状の出ない人や、まだ発症していない人でも、他人に感染させることがわかったからである。
CDCは、人に近づく可能性のある公の場に行くときにはマスクをすべきであるとしている。健康そうな人でも、すでに感染していて人にうつす恐れがあるから、それを避けるためである。また、マスクをしているから人と接触しても大丈夫ということにはならない、人との距離を保つことは依然として最重要であるとしている。
(つまり、マスクは、人からうつらないようにするよりも、人にうつさないようにするのに役立つとしている)
口、鼻、眼からのCVの侵入を許さないために
・人と対面するときは十分距離をあけて
・頻繁に手洗いを
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