自由時間 (95)  きらめく星座                山﨑赤秋

 宇宙には無数の星がある。われわれが夜空に見る星ですらあの数だ。地球に光が届いている銀河の数は少なくとも1700億個で、それぞれの銀河に含まれる恒星の数は、小さい銀河で1000万程度、巨大な銀河では100兆個に達する。そのほかに惑星や彗星があるから、まことおびただしい数の星を見ていることになるが、宇宙全体では一体どれほどの星があるのか。
 しかも、われわれが見ている星たちは、いま現在の星たちではない。太陽系の惑星でも、土星は80分前、地球に一番近い恒星では4.2年前、有名なところでは、オリオン座のベテルギウスは500年前にそれぞれの故郷を離れた光が、いま地球に到達して、それをわれわれは同時に見ているのである。いま現在は、すでに超新星爆発を起こしてばらばらになってしまった恒星もあるかもしれない。
 星空を見ながら、そういうことを想像したり、宇宙は膨張を続けているということを思ったり、ビッグバンやブラックホールのことを考えたりすると、ヒトは一体何のために存在しているのか、というような青年が持ちそうな疑問にとらわれ、いっとき若返ったような気分になる。
 われわれ凡人が星空を見ると、本当に大小色々な光の点が、無秩序に天空に散らばっているとしか見えないが、イマジネーション豊かな人が見ると、違って見える。色々な人や動物や物が見えるのだ。
 恒星はその名のとおり、つねなる星である。天球上でその相対的位置がほとんど変わらない。あまりにも遠くにあるからだ。古代から、人々は、星空を見上げては、この星とこの星とを結んでみると何かに見えないかと、半ば遊び心で星々をまとめて色々なものに見立てていった。そうして星座が生まれた。
 星座の起源は、5000年前の古代メソポタミアにさかのぼる。遺跡から星座を写したと思われる粘土板が発掘されているのである。その後、星座はどんどん増えてゆき、古代には50近い星座が作られたことが分かっている。それらは、のちに古代ギリシャに伝わった。人々は星座の動きが規則的であることを発見し、農作業のきっかけを教えてくれる農事暦として、あるいは旅人たちの道案内をしてくれるGPSとしての役割を果たしてくれることを学ぶ。
 また、古代ギリシャ人にとっては、星座は彼らに伝わる神話・伝説の世界を美しく保存してくれる保管庫でもあった。星座を神話・伝説に登場する英雄や動物や道具などに見立て、そこから話を紡ぎ出し、子々孫々に伝えて行き、神々に対する畏敬の念を深めてゆく。
 いま、われわれが星空を見上げたとき、ロマンティックな気分になれるのは、まさに、古代ギリシャ人が、星々を結んで星座を作り、その星座から紡ぎ出してくれた伝承のおかげである。
 さて、星座はいくつあるか。88である。古代ギリシャでリストアップされた星座は48であるが、その後、大航海時代に、北天にはなかった星々が南天で見られるようになり、それらを結んだ星座がいろいろ創られるようになった。ややこしくなってきたので、国際天文学連合がその整理に乗り出し、1930年に、全天を88の星座に整理し、黄道12、北天28、南天48の星座を確定させた。
 古代ギリシャでは、星座の数だけ神話にまつわるエピソードがあったわけであるが、ここでは、季語にもなっているオリオン座にまつわる話を紹介する。
 オリオンは海神ポセイドンとアマゾン国の女王との間に生まれた。そのため、海の上を自由に歩くことができたが、何よりも、狩りの名人として知られていた。力が強く、その振る舞いも荒っぽかった。
 あるとき、オリオンはキオス島の王のところに滞在していたが、その王女に惚れてしまう。結婚しようと、オリオンはライオンを素手で倒し、その皮を王女に贈ったりするが、王も王女も彼を好きになれない。王はオリオンを泥酔させ、ぐっすり眠っているところを部下に襲わせて、焼け火箸で目をつぶし、そのまま海岸に投げ捨てる。
 気が付いたオリオンは深く悲しみ、大神ゼウスに祈る。ゼウスは哀れんで願いを聞きとどけ、視力を取り戻してやる。
 視力の回復したオリオンは、力も取り戻し、以前のように再び狩りに出かけた。ある日、女神アルテミスに出会い、すっかり気に入られ、一緒に狩りをするようになる。
 アルテミスは月の女神にして森林と狩猟の神でもあり、純潔の守護神でもあった。アルテミスの兄はアポロンで、それ故に2人の恋を許さない。
 ある日、アポロンは、オリオンが川を渡っている姿を見つける。光を当てて鹿のように見せ、妹に、あの鹿を射ることはできないだろうとそそのかす。むっとして妹は矢を放つ。見事に命中して、川面が血に染まる。岸に打ち上げられた死体を見ると、オリオンだった。嘆き悲しんだ女神は、オリオンを天にあげ星座にした。また、2度と恋をすることはなかった。
 ところで、小生は占いに興味はないが、星占いの本を見ると、小生の属する水瓶座(1/20~2/18)の人は、「人とは違う斬新な考えと、大きな夢をこころの内面に秘めています。豊かな愛にあふれた人です・・・」なんてことが書いてある。満更当たってなくもないかも。