日本酒のこと  (26)                     安 原 敬 裕
「日本酒の発泡酒」

 海外での和食ブームと歩調を合わせて、日本酒の普及が徐々にですが着実に進展しています。そして、パリではフランス人が選ぶ日本酒コンテストが開催されています。純米酒や吟醸酒の他に発泡酒の部があり、昨年は山梨県北杜市の「七賢」が優勝しました。
 日本酒の発泡酒はまだまだマイナーですが、酒販店等で見かけることも多くなりました。現在販売されている発泡酒の製造方法は大きく二つのパターンに分類されます。その第一は、タンク内で発酵途中の醪(もろみ)を粗い目で搾って瓶詰する昔からある方法です。そうすることで発酵の際に出る炭酸ガスが瓶の中に残ることで発泡酒となります。白濁した活性清酒と呼ばれ、新酒の出回る冬から初春にかけての季節限定のお酒です。
 その第二は、出来上がった普通の日本酒に炭酸ガスを含ませる方法であり、こちらは無色透明で白濁していません。これはシャンパンやイタリアのスプマンテ等のワイン系の発泡酒に似せたものであり、女性や若者を日本酒ファンに取り込みたいとの商魂があります。そして、これには次の三通りの製造法があります。一つ目は単純に日本酒に市販の炭酸ガスを注入するものです。二つ目は、タンク内の日本酒に少量の米麴と清酒酵母菌を加え発酵させることにより炭酸ガスを発生させるものであり、澱を沈殿させた後に瓶詰します。そして、三つ目はシャンパンと同様に瓶内で二次発酵させる方法です。これは、瓶詰した日本酒に発酵用の炭酸ガスと酵母菌を加えて二酸化炭素を発生させ、その後に瓶の口を凍結して澱を取り除くという方法です。当然のことながら、三つ目の瓶内二次発酵が最も泡がきめ細かく値段も違ってきます。
 その見分け方ですが、一つ目の発泡酒はラベルの材料の欄に「炭酸ガス」と記載されています。そして三番目の瓶内二次発酵の場合はその旨が記載されますが、二つ目のタンク内で発泡させたお酒については何の記載もありません。購入される時には是非ともチェックされることをお勧めします。金賞を受賞した「七賢」は当然のことながら瓶内二次発酵であり、活性清酒とは異なる新たな泡の世界の魅力を発見できること請け合いです。
 さて、北海道を代表する酒蔵の一つに日本海に面した増毛町の「国稀(くにまれ)」があります。蔵の売店で発泡酒が目につき尋ねたところ、二次発酵用にシャンパン用の酵母菌を使用しているとのことでした。面白いと思い購入してホテルで飲みましたが、日本酒ともワインともつかない中途半端な香味との印象でした。しかし、このような挑戦や試行錯誤は必ずや日本酒の更なる進化に結びつくものと確信しています。また先日は、清酒酵母菌でシャルドネ種の葡萄を醸したチリの白ワインを飲みました。諏訪の「真澄」の酵母菌で低温長期発酵したとのことであり、辛口でボリューム感のある香味に正直驚きました。
夜鷹啼き講衆酒に寝落ちたり盤水