四季の野鳥 (10)         
 白鳥(くぐひ)    勝股あきを 

 初めて野生の白鳥を見たのは、30年以上前のこと。「古徳沼」という茨城県那珂市にある農業用の池で、近所の人が偶々飛んで来た白鳥に給餌をしたのがきっかけで、以来毎年100羽以上の白鳥が来る所である。
 池の一端に白鳥が集まった中の2, 3羽が水面を叩くように走って飛び出すと、続いて何羽かが飛び立ち、しばらく空を飛んでからまた池に戻るのを繰り返しているのを多数のカメラマンが望遠鏡で盛んに撮影していた。
 白鳥には大白鳥と小白鳥がいるが、共にユーラシア大陸で繁殖し、東北地方では宮城県の伊豆沼などが渡来地として有名である。白鳥類は奈良時代から「くぐひ」の名で知られ、「たづ」等とも呼ばれ、また平安時代には「こう」「こふ」とも呼ばれたが、それは鳴き声によるものかも知れないという。安土桃山時代から「はくてう」とも呼ばれるようになったという。(鳥名の由来辞典)
(例句)
白鳥といふ一巨花を水に置く 中村草田男
八雲わけ大白鳥の行方かな 沢木欣一
白鳥に至る暮色を見とどけし 細見綾子
雪降る海白鳥群るる辺は明し 草間時彦
千里飛び来て白鳥の争へる 津田清子
白鳥とゐて日の暮を忘れゐし 鷹羽狩行
諍ふも睦むも白鳥同じ聲 棚山波朗