四季の野鳥 (4)         
 翡翠・川蟬(カワセミ)    勝股あきを 

  野鳥に関心を持つようになった頃、なぜこの鳥には昆虫の名がついているか疑問に思ったことがある。今回名前の由来を調べると、本鳥は奈良時代から「そにとり」とか「そび」と呼ばれていたが、その後「そび」「しょうび」「しょうびん」と呼ばれる一方で、「そび」「せび」「せみ」とも呼ばれ、安土桃山時代には川にいる「そび」「かはせみ」になり「かわせみ」と「しょうびん」という二種類の鳥の名に分化したらしい。(図説日本鳥名由来)
 また室町時代から漢名を取り入れ翡翠とも呼ばれるようになった。翡は雄、翠は雌だという。鳥名の翡翠が元でそれが宝石の名に転用されたのであって、その逆ではない由。
 俳句を始めてから代表的な夏鳥のかわせみが真冬にも出ることは知っていたが、ある年の新年俳句大会で生江通子さんの〈かはせみの瑠璃一閃や初山河〉の句が棚山主宰の天賞を獲得されたが、季語にも強弱があることを教えてくれたのは私の先輩だった。
翡翠の紅一点につゞまりぬ高浜虚子
子の声と翡翠のゆくへ澱みなし飯田龍太
翡翠の影こんこんと遡り川端茅舎
翡翠の打ちたる水の平かな松根東洋城