四季の野鳥 (5)         
 鴈(がん・かりがね)・初雁    勝股あきを 

 雁の中で初雁はその年初めて聞いた雁のことだが、その訪れを人々が待ち侘びているという意味で春の鶯、夏の時鳥と並んで、雁は秋を代表する鳥と呼ばれ、昔から歌人が好んでいた鳥である。
 しかし何故雁が「がん」とか「かりがね」とか呼ばれるのか少し調べると、万葉集の中でも「かりがね」が雁の鳴声を詠んでいるもの(雁が音)と「がん」の意味であるものと両方あるが、語源については、鳴声によるという説が有力である(日本鳥名由来辞典)。
 ところが、この辞典の二人の著者による共著『図説鳥名の由来辞典』(2005年発行)によると、鎌倉時代に語調を強くするため、いくつかの鳥名は漢音の音読みになり「かり」も「がん」と呼ばれるようになった。江戸時代になると「がん」が一般名となり、「かり」「かりがね」は雅語になったという。

 (例句)

 病雁の夜寒に落て旅寝かな 芭蕉
 雁や残るものみな美しき 石田波郷
 雁の数渡りて空に水尾もなし 森澄雄
 雁啼くやひとつ机に兄いもと 安住敦
 古九谷の深むらさきも雁の頃 細見綾子