晴耕集秀句
藜いま杖の丈なるわが生家池内けい吾
洗鯉寅さんの声ききながら蟇目良雨
木苺に舌染めてまだ恋知らず柚口満
一の松二の松緑立ちにけり朝妻力
逝く夏の小さく畳む夫のもの古市文子
己が葉の上に散りけり大賀蓮岩田諒
風鈴売り音のなかから顔出しぬ奈良英子
サングラスもとより三猿にはなれず沢ふみ江
先づ話すなんじやもんじやの咲きしこと?田眞澄
極楽の風が通るよ紅はちす武井まゆみ
雨読集秀句
西瓜はむ一夜千日行終へて青山悦子 山寺の夕べしづかにねぶの花宇井千恵子 きつね雨片白草の艶増せり岡村美恵子 蒲の穂に湧き立つ力ありにけり鏡原敏江 悪人になりたるつもりサングラス柿谷妙子 人語恋ふごとく守宮が玻璃を這ふ川野喜代子てつぺんの風ゆたかなり立葵木崎七代 番号で呼ばれ獄舎の草むしり坂下千枝子 睡蓮や遠き記憶は水のごと佐藤さき子 空蝉のまだ魂の抜けきれず鈴木幾子
耕人集秀句
つつましき暮しに足りぬ花茗荷菊井義子 篝火に火蛾の舞ひ飛ぶ野外能居相みな子 ポンペイの石の轍や炎天下青木晴子 又三郎隠れゐさうな雲の峰?野高代 一時の命を鳴きて蝉の去る川辺康 人を待つ心を活けて花桔梗徳本道子逃げ場なき一本道や大西日青木茂雄開くほど紅うすれゆく蓮の花末重敏子 遠泳の身を細うして戻りけり汲田酔竜
- 2024年11月●通巻544号
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