今月の秀句 棚山波朗抄出
「耕人集」2018年8月号 (会員作品)
人に杖枝に支へ木緑さす綱島きよし
合歓の花いのりのごとく葉を垂れて大林明彦
卯の花腐し刻の流れの容赦なく池田年成
アカペラの声の広がる聖五月伊藤克子
ひとつづつみどりをぬけて山法師山本聖子
鑑賞の手引き 蟇目良雨
人に杖枝に支へ木緑さす
杖を突く人も、支え木を必要とする松の木もすべて愛おしいと感じる作者の年輪が滲み出る佳句。無駄な一字もなく句に芳香が立つ。
合歓の花いのりのごとく葉を垂れて
合歓の花を詠った句は多いが葉まで言及した句は少ない。花の美しさもさるものながら葉の垂れた姿が祈りをささげているようだと看做した作者の感性の鋭さ出色だ。合歓の花の木は暗くなると葉を閉じ始める。この様子を句にしたもの。
卯の花腐し刻の流れの容赦なく
時の流れの容赦ないことは誰もが感じること。卯の花腐しの雨に濡れてしみじみと感じた作者の感性に軍配。時雨などの季語を持ち込んでは句が重くなる。ほどほどのところで手を打つことが俳句の要諦。
アカペラの声の広がる聖五月
無伴奏の合唱曲がアカペラ。古くからの友人と町にでたのだろうか、余りの気分の良さにアカペラが口をついた。聖五月というからバッハの何かの宗教曲を歌ったのだろうか。
ひとつづつみどりをぬけて山法師
山法師を擬人化した。大木の葉ごみの上に白い顔をのぞかせている山法師の花。ひとつずつ緑のベールを抜けて顔を出している。歌をうたっているのだろうかおとぎの国の世界に誘う。
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