今月の秀句 蟇目良雨抄出
「耕人集」2021年2月号 (会員作品)
穭田に鳥居の影や大斎原峯尾雅文
竹林の葉擦れの音も小春かな西尾京子
時雨るるや手打蕎麦待つ深大寺高瀬栄子
煤払我関せずとあくび猫小林美智子
沢水の流れを変へし落葉かな野口栄子
鑑賞の手引 蟇目良雨
穭田に鳥居の影や大斎原
大斎原(おおゆのはら)は熊野本宮旧社地を指す神聖な場所。今では鳥居の影が穭田に写っていることから分かるように周囲に稲田しかない場所であるが、元は熊野本宮大社があった場所。時代の変遷に心を痛めている作者が見える。
竹林の葉擦れの音も小春かな
竹林には四季を通じてさまざまな音が聞こえる。一句を貫くここちよいリズムから小春日の静かな一日が想像されて来る。
時雨るるや手打蕎麦待つ深大寺
蕎麦と深大寺は関係が深い。深大寺に参拝してから参道で味わう蕎麦は格別である。そばを待つ間に時雨が降って来た。時雨の軽やかな雨音を聞きながら静かに深大寺の一日を省みる作者がそこにいる。
煤払我関せずとあくび猫
父母の指図で一家総出の煤払いなのだが、猫だけは唯我独尊(マイペース)。あくび迄している。それが猫の特質だと分っている作者は少し猫が羨ましくなっている。
沢水の流れを変へし落葉かな
起伏の少ない沢を流れる水は少しのことで流路をかえてしまう。落葉が溜まってしまいそこから水の道が変ったことを発見し一句にしたためた。
- 2021年3月●通巻500号
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