棚山波朗名誉主宰 作品

波に乗る海月に意志のごときもの
毛虫焼き日の暮の妻素気なし
三伏の雑魚ばかりなる地曳網
生きもののすぐ動き出す喜雨の後
天辺に力をあつめ夜の噴水
瓶の玉鳴らしてみたくラムネ買ふ
命あるものより空蟬長らへし
                            句集『料峭』より 

蟇目良雨主宰 作品

妻病める窓に緑のさす中に
黒帽に黒ネクタイや四十雀
青嵐一鳥声を吹きとばす
良き雨に満面の笑みひきがへる
初鰹未婚の妻を眩しみぬ
麦飯の犢鼻褌(ふどし)といふもなつかしき
  刺身におろせば
疫病(えや み)より恐し虎魚の毒の鰭