棚山波朗名誉主宰 作品

梅雨茸地をはふ風の雑木山
十薬やもろ肌を脱ぐ辧財天
栗の花地に落ち錆の始まれり
呼ぶごとく應ふるごとく河鹿笛
紫蘇畑に雨音高き一ところ
郭公や肩幅廣き穂高嶽
夜鷹鳴きいつも何かに急かれゐる
                               句集『雁風呂』より 

蟇目良雨主宰 作品

山繭に天平の色すこしある
犬ふぐり太古の海の青湛へ
性(さが)かなし花見の父を母が擲ち
白木蓮や母は女をいつ捨てし
風割つてとぶ熊蜂の厚き胸
たそがれて人の恋しき松の芯
一生の今どのあたり新茶酌む