棚山波朗名誉主宰 作品

けふ厄日喧嘩好きなる鳶鴉
気にかかりゐてそのままに秋扇
秋蝶の急かされてゐる木戸の風
蛇穴に入りて雨雲動き出す
夜は暗き故里の径蚯蚓鳴く
去ぬ燕らし翻ることをせず
鰡跳ねて海の入日を早めけり
           句集『料峭』より

蟇目良雨主宰 作品

皺苦茶なハンカチけふを生き抜いて
鱧の皮好きな女に泣かれけり
母思も へば何故か隠元胡麻よごし
灯芯蜻蛉 (とうすみ)や素十生涯三句集
蚊の声もなつかし母の遠忌くる
妻がゐぬ旅寝の夜を青葉木菟
女王卑弥呼ゐるらし蟻の地下国家
                        「俳句」八月号掲載句含む