蟇目良雨主宰 作品

炎天の地獄で食べる黒玉子
酔芙蓉ある日の妻の匂ひする
新涼の水を欲しがる砥石かな
尻打てば刃を出す鉋ほうせんくわ
投函の底打つまでの秋暑し
妻の乗るために低めに茄子の馬
霊棚に来てゐる若き頃の妻
ふるさとの暗き燈籠流しかな
どんぶりに移せば響く新小豆
老い知らぬやうにカンナの燃えつづく
しろがねの水尾まつすぐに月見舟
相続の終はれば淋し桐一葉