蟇目良雨主宰 作品

鶏頭の襞に秘めたる恨(は ん)いくつ
蓮の実の飛んでそれから流離譚
星荒き河口の宿や鯔を喰ふ
        満80歳自祝
日本橋渡るや露の八十歩
掲示板に食み出すビラの多き秋
鶺鴒の尾に始まるやヘイ・マンボ
うらおもてひかりて鶸の渡りかな
黄泉にゐる元気な妻へ瓢の笛
濃く淹れし茶に甘みある寒露かな
妻のゐるけはひ枯葉のかさと音
里山の普段着ながら粧へる
      往時
ふるさとを離るる障子洗ひけり