蟇目良雨主宰 作品

三寒の厨に貝の口固し
ささら波立てて四温の川流る
津軽三味逆しまに負ひ雪女郎
妻に薫く泥沈香や鳥雲に
春泥の靴が乗り込む上野行き
草餅の一つは妻に供へけり
手に残る砂のざらつき雁供養
勿忘草いくさは許す可らざり
黒髪の乙女や草は芳しき
佐保姫の暗 峠 (く ら が り)にきて一休み
たんぽぽの蘂が黄色に発火して
犬ふぐり出会ひに渡る流れ橋