蟇目良雨主宰 作品

蛍火をこれから妻と思ひ見る
白玉をきつと何処かで芭蕉曾良
金剛の粒のごとくに滴りぬ
生身魂とつひに呼ばれてしまひけり
老人に欲のまだあるサングラス
この道の今を信じて雲の峰
小名木川涼しき風を流しけり
       往時
量子論に倦んで玻璃戸の守宮見る
覇王樹や三代つづく印刷屋
阿修羅像おん前に閉づ扇かな
赤のまま三 月(みつき)で逝きし姉のこと
新涼や高音の鳥の鳴き交じり