蟇目良雨主宰 作品

魚は氷に上りて月を冀(こいねが)ふ
一村を包みて芦を焼くけむり
川越えて降る芦焼の炭ぼこり
安らぎも少し落第一年目
為すまじきことに手を出し冴返る
     友人死す
浅き春遺影になれば微笑むで
薄氷の古鏡のごとく桶に張り
雪嶺の衝立まぶし花杏
馬蛤貝や干潟の悲話を聞く破目に
ラビットが転がされあり犬ふぐり
赤き根を母とも思ふ菠薐草
未だ苦し青春の恋ふきのたう