蟇目 良雨 主宰 作品

紅娘 (てんとむし)きて華やぎぬ夜の書斎
空梅雨や鯉のあぎとふ水の上
だらしなく曲がる片陰古書の町
リコピンだデコピンだとて蕃茄食ふ
白服にゲルべゾルテの似合ふ父
翡翠の来て一水の引締まり
蟻地獄ありて七堂伽藍かな
パナマ帽もう被らざり妻の死後
五月雨や京は暗さを取り戻し
石山の奥へ持ち込む鰻めし
夏落葉降るや冗語を削ぐごとく
式部の間まで聞こえけり雨蛙
          (俳句界2024年7月号3句含む)