はいかい漫遊漫歩 松谷富彦
(144)落花生老婆の口に三時間 斜断鬼(立川左談次)
三魔(宗匠 山藤章二 イラストレーター) 合評会、ツッコミ会を始めます。
落花生老婆の口に三時間
斜断鬼(噺家 立川左談次) わが作ながら名句だねぇ。
三魔 ほんと、まさに駄句の傑作。「名駄句」です。
風眠(高田文夫 放送作家) “メイダク防止条例”(笑)
三魔 本(句集『駄句だくさん』山藤章二・駄句駄句会編 講談社刊)の説明をする時に、この句を言えば、もうほとんど本書のコンセプトが通じる。
斜断鬼 つーことは、他の句は要らないってこと(笑)
駄郎(吉川潮 作家・演芸評論家) バカは褒めると、すぐつけあがるからね(笑)
粕利(橘右橘 寄席文字書家・芸能プロダクション社長) これ、死後三時間じゃないの。
三魔 そうそう、生きているとはかぎらない。それもたぶん歯じゃなくて土手で噛んでた。
* * *
こんな調子でページが始まる〈 日本ではじめてのC級句集 駄句、この粋と恥。全113句、ツッコミ大合評会。山藤章二宗匠率いる雑排句会「駄句駄句会」の奇才・珍才。互いの辛口・甘口・大脱線批評を満載した傑作選!〉と“腰巻”に謳う珍本から珍句、迷句を抜き書きでご紹介。
まずは2013年刊の同句集、山藤宗匠の「まえがき」から抜粋――〈(駄句駄句会を)20年やっているから、駄句が溜まった。世の中には名句秀句の本がいっぱい出てるけど、駄句ばかり集めた本、てぇのがない。俳句本の棚に置いとけば、世の中にはボンヤリしたやつや変わり者、万引き少年なんかが持ってゆくかも知れない。〉
そして、駄郎(吉川潮)同人の「あとがき」からも抜き書き――〈 同人の名誉のために言っておくが、たまには「どこの句会に出しても恥ずかしくない名句」が詠まれることだってあるのだ。ところが、その手の名句は抜かれず、「どこの句会に出しても恥ずかしい駄句」ほど点数が高いのが我が句会の特徴である。従って、本書には(同人の)自選句の中から宗匠が選りすぐった駄句が多く収められている。「駄句だくさん」という題名の訳にガッテンして頂けたでしょうか。〉
衣替え私の彼は左前
三魔 面白い。ピタリ決まってるね。「左前」って、ひとつは和服の常識がない人の着方。もひとつは経済状態が良くないひと。これどっち?
斜断鬼 私はね、日韓友好かと思ったんだけど。
寝ん猫(木村万里 演芸プロデューサー) えーっ、何なの、それ?
斜断鬼 向こうの着物は左前なんだよ。
喫蟲(松尾貴史 俳優・テレビコメンテーター) あ、チョゴリですね。
斜断鬼 そうチョゴリ。新大久保よく飲みに行くから。
駄郎 俺はそんなつもりで詠んでないよ。麻丘めぐみのパロディ。♪私の彼は左利き~
風眠 なんだ、国際的な句だと感心してたのに(笑)
(敬称略 次話に続く)
(145)淋しさは左右にとび散る放尿時 三魔(山藤章二)
淋しさは左右にとび散る放尿時
斜断鬼 ひどい句だね、これは。
粕利 犯人は名乗ってください。
三魔 三魔めでございます。23年前、記念すべき第1回の時の句です。当時の私は本当に尿がとび散っていた。医者に行ったら、雑菌が入り込んでるだけだからと、薬をもらって治った、というわけです。
駄郎 「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」のもじりですね。
野ざらし(野末陳平 元参議院議員・中国文学者) 俺、わかる。年とるとオシッコの問題があるんだよ。
風眠 年をとると左右、若い時は上下なんだよ。俺なんか顔がビショビショ(笑)
三魔 左右だ、上下だのうちはまだいい方で、もっと年とるとジワリジワリと洩れてくるのよ。で、尿もれパンツが売れてる。ね、陳さん。
野ざらし よせよ、俺にふるなよ(笑)
三魔 気分をかえて、次。
白布を昼寝の姑の顔に載せ
風眠 ほほえましい。小津安二郎を思わせる。
斜断鬼 この布を水に浸してやると、死んじゃう(笑)
駄郎 まだ乾いてるぶん、かわいいね。
三魔 作者は誰?
喫蟲 これ、たぶんボクです。(笑)
邪夢(島敏光 司会者・笈田敏夫の息子) キッチュ、やったことあるだろ。
喫蟲 ないです、ないです(笑)
野ざらし 俺も寝るとき気をつけよう。
斜断鬼 モチを食わせるという手もある(笑)
地平線みつめてまぐわう青蛙
邪夢 蛙はまぐわうとき、まんまるな目で地平線見てる。スケールの大きさ。
三魔 これ、写生句なの?
中瀞(林家たい平 噺家・武蔵野美大卒) まぐわうだけにシャセイ句でしょ。
風眠 シャセイ句、大セイコウ。
三魔 いまの子、「まぐわう」ってわかんないだろうね。
野ざらし あ、それはわかんないよ。いまはエッチだもん。
斜断鬼 陳平先生、どのくらい前にまぐわったんですか。(笑)
野ざらし や、やめろ! (敬称略 次号に続く)
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