「俳句文法」入門 (19)          
─ 文語文法と口語文法について  そのⅡ─             大林明彦 

  しづもる(静もる・鎮もる)という語は明治期に歌語として創られた。古語ではしづまる。自動詞でラ行四段活用。万葉集にもあり現代語(静まる・鎮まる)と同じだ。口語では五段活用となる。さて今年の話。
 「鎮もるる」「静もるる」という用例があった。ラ行下二段活用の連体形のお積りか。語幹が〈静も〉で順に〈れ・れ・る・るる・るれ・れよ〉この種の用例は文語文法にはなく、口語文法にもない。文語の四段活用は理論的には下二段活用になりうるし、その両者を持つ動詞(軽む等)もあるが、静まるに下二段活用がないのと同様に静もるにも下二段活用はないであろう。使用例があれば御教示をお願い致したい。
 「静もる」の口語的な連体形は静もれる、であろう。品詞分解すれば「静もれ」(ラ行四段の命令形)に「る」(完了・存続の助動詞の連体形)が接続した形。
 静もれるを一語の下一段の動詞としてみるのはやはり無理か。活用できぬことはないが用例は未詳。
 「足るる」も誤用。足るはラ行四段活用。上二段活用はない。口語で「足りる」が正用。上一段活用。足ず、足て、足りる、足りる時、足りれば、足ろ。