「俳句文法」入門 (20)
─ 助動詞「り」について─ 大林明彦
助動詞とは動詞を助けることば。更に言えば付属語で活用があり、用言(動詞・形容詞・形容動詞)等に付いて様々な意味(完了・断定・受身・推量など)を添える働きをする語のことである。三十数語ある。
中でも「り」が頻用され而も誤用の見本市の観を呈するので嚆矢に注意を喚起したい。「り」は「あり」の転じた約語。記紀歌謡に既にある。本来存続の意味で「…ている。…てある」と訳す。完了の意味(…た。…てしまう、と訳す)に用いられることもある。活用は《ら・り・り・る・れ・れ》( 未・用・止・体・已・命)そして古文では四段活用とサ変の動詞にしか付かないのだ。古文は書き言葉。超エリート達の日本遺産。文法(言語体系。ルール)があったのだ。南無。
梅雨の月昭和歌曲を楽しめり石鍋みさ代
池の水替へて一気に夏めけり山城やえ
青葦の沼面に水輪脈打てり武田禪次
ほぐれつつ牡丹大きく傾けり窪田明
投げ銭や胎蔵界の水澄めり佐藤栄美
最新号より正用例。皆四段活用の動詞の命令形についている。已然形につく説も根強い。続きは次号で。
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