「俳句文法」入門 (3)          
─ 助動詞助動詞「り」は完了と存続の意味─          大林明彦   

  助動詞「り」は助動詞「り」は、「あり」の転じた約語で、完了と存続の意味がある。完了は「…タ。…テシマッタ。…テシマウ」と訳す。存続は「…テイル。…テアル」と訳す。訳によって文法的意味は決定される。
 「り」が四段活用の命令形に接続するという説を改めて打ち出したのは久保田淳先生(日比谷高教論→東大教授)である。従来は已然形に付くが定説。本誌より例句を挙げる。りの上は命令形でいいではないか。
かたかごの風に頷きつつ咲けり伊那男
豆撒きの畳の上に躓けり伊那男
松過ぎに羽音きしませ朱鷺翔てりやえ
初鏡喪中の眉を濃く引けりふみ江
木も石も寒月にこゑ失へり恵子
 音声学的に「り」は命令形に付くとするのは岩波古語辞典。最新詳解古語(明治書院)も。活用はラ変型に、〈ら・り・り・る・れ・れ〉と活用する。サ変も命令形に付く説はあるが、わが久保田淳師(一緒に編集の仕事をした)は未然形に接続するとした。サ変(せ・し・す・する・すれ・せ(よ)と活用)の例句。
帰り来ぬ者へ白息太くせり