「俳句文法」入門 (33)          
─  「横たふ」について   其のⅡ ─            大林明彦

 岩波書店「広辞苑」編集部より「横たふ」(口語では「よこたう」)についての返信あり。感謝と小学館の『日本国語大辞典第二版』の「よこたう」の項目についての紹介。小学館本でも「かなり特殊な例」と言って逃げている。そして「二段活用と四段活用の対立において現れる」と言う。横たふに四段活用はない。或る結社の主宰は「大林さん文法を知ってる人は居ませんね」と仰ったが大賛成。学者さん達は各々の説を立て学者の数ほど説がある、とも言われる程だ。時枝誠記文法を大切にしたい。私を文学に導いた塩田良平先生(府立一中→東京工業高等学校〈今の東工大〉→東大国文科卒)の後輩学友。塩田先生のは学校文法。私は杉並区の先生宅で教わった。

 「荒海や佐渡に横たふ天の河」この句は小学校で習った。「横たふ」はすっと心に入って意味も鮮明だ。文意上は分かる。が文法上は破格と思う。

「ふ」は動詞を作る接尾語。「ためら」「たゆた」古語では四段活用。この「ふ」と同じ風に考えたか。山本健吉は再帰動詞で可と言う。しかし日本語に再帰動詞はないと金田一春彦「日本語」(岩波新書)。