「俳句文法」入門 (35) 
─── 助動詞「べし」について  其のⅡ ───           大林明彦

蟇目編集長に「俳句文法入門」という題を頂いた時私は同じ題の本を手にして参考にした。七田谷まりうすさんの著書で飯塚書店の出版である。この事は蟇目さんにもお話した。七田谷さんが先頃お亡くなりになられたので今回「べし」の章を紹介したい。

玆(ここ)十日萩大名といひつべし阿波野青畝

完了の助動詞「つ」に連なった「べし」は、萩の花にかこまれて確かに萩大名といってよい、と当然・適当の意を強調して是認する。 ー (引用了)

 「ぬ」は自然的完了で、「つ」は人工的完了。子規の「ぬべし」に対して「つべし」。萩大名といは→いふべし→いひつべし、と最強調されているのだ。

 「つ」は完了・強意・確述の助動詞。て・て・つ・つる・つれ・てよ、と活用する。「萩大名と確かに言ってよいだろう」と訳すのも可か。確述(確かに)・適当(いってよい)・推量(だろう)。私のは主に受験文法的な物で、「べし」の意味については、当・意・推・適・勧・命・可と七つの意味を覚えている。とういすいてきかんめいか、という念仏。うまい語呂合わせもある。(桐原書店の古典文法書)が、目下忘却。