「俳句文法」入門 (4)          
─ ヤ行に活用する動詞に注意しよう ─          大林明彦 

  新旧仮名遣いでも同じ物がある。特に順接の接続助詞「て」の上にくる連用形の場合である。老て、悔て、報て。これが ひ に誤記されるのを句会等でよく見る。ヤ行上二段活用はこの三語なので覚えよう。老ゆ、悔ゆ、報ゆ。各々、〈い・い・ゆ・ゆる・ゆれ・いよ〉と活用する。同じく「ゆ」が終止形の下二段活用の動詞をみてみよう。見ゆ・生ゆ・冷ゆ・燃ゆ・消ゆ・越ゆ・絶ゆ・映ゆ・萌ゆ・増ゆ・覚ゆ・癒ゆ・栄ゆ等は皆〈え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ〉と活用する。誤記に、見へ、越へ、絶へ、癒へ等がある。三百回程句会に出席した私の実態論である。ヤ行下二段の動詞のある句を本誌より引用する。
藻の生えて寄居虫の宿空のまま波朗
寒晴に襞よく見ゆる金北嶺やえ
霜柱明けの明星消ゆるころ花果
富士山の良く見えてゐる初句会智惠子
境内に榾の燃えさし追儺寺美保
万両のふゆるがままに棲み古りぬ静男
千両の赤き実映えて庭豊か英子