「俳句文法」入門 (44) 
─── 助動詞「る・らる」について ───         大林明彦

 る・らるには受身・尊敬、自発・可能の意がある。動詞の未然形に接続し、下二段型に活用する。前者には命令形があるが、後者にはない。後図を参照。
ががんぼの置き去りの脚掃き出さ棚山波朗
吹かれ来てすぐに吹かるる波の花棚山波朗
炬燵より背低き老とならけり高浜虚子

 前一、二句の波朗俳句が受身の終止形と連体形。三句目の虚子の句は尊敬の意の連用形。皆未然形に接続。
 自発は「自然にそうなる」の意で「自然に・・・れる。自然に・・・られる」等と訳す。可能は打消を多く伴う。
選りすぐりばかりに袋掛けらるる阿部月山子
雪しげく何か家路の急がるる中村汀女
伊予霙海渡らねば帰ら山口誓子
 一、二句が自発。三句が可能、打消で不可能となる。

意味 未然形 連用形 終止形 連体形 己然形 命令形 活用の型

らる

受け身と尊敬

られ

られ

らる

るる

らるる

るれ

らるれ

れよ

られよ

下二段型

意味 未然形 連用形 終止形 連体形 己然形 命令形 活用の型

らる

自発と可能

られ

られ

らる

るる

らるる

るれ

らるれ

 ○

 ○

下二段