「俳句文法」入門 (50) 
─── 各助詞「にて」について ───         大林明彦

 体言・連体形に接続。現代語の「で」に当たる。鎌倉時代以降「にて」から「で」へと音の変化を起こした。濁音「で」を忌み私は「にて」を使う事が多い。
場所を表す。 (…で)土佐日記「…ほとりにて
②状態を表す。宇治拾遺物語「寝たるよしにて
黙食といふマナーにて漱石忌蟇目良雨
野末より始発電車の朧にて大西裕
③原因・理由を表す。(…によってと訳す)竹取物語「竹の中におはするにて知りぬ」
一夜にて五尺の根雪出羽の国佐藤栄美
④手段を表す。(…で。…によって。)徒然草「月花をばさのみ目にて見るものかは。」
佐渡の海にて若布刈りにけり(仮作)
⑤年齢を表す。(…でと訳す)大鏡「御歳十八にて位につかせ給ふ」
高志抱き十五にて春上京す詠み人知らず
 以上のような意味に付随して、方法・材料・資格・時間などを表す場合がある。「にて」は格助詞「に」に接続助詞「て」が付いて一語化したもの。
 助動詞連用形に接続助詞のついたにてあり。