「俳句文法」入門 (60)
─── 接続助詞「て・して」について ─── 大林明彦
「て」「して」は連用形に付く。「て」の上は連用形と覚える。「して」の上も連用形がくる。
①単純接続(…で。…の状態(様子)で、と訳す)
手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。 (竹取物語)
むさし野に生き長らへて初日受く 山田春生
寝ねもせずして起きゐたり。 (宇治拾遺物語)
何事も関はらずして春を待つ 乾佐知子
②順接の確定条件(…ので。…から。)
十日さはることありてのぼらず。 (土佐日記)
水牛の冬波受けてたぢろげり 広瀬元
悲しきに堪へずして、ひそかに (土佐日記)
忍びずして遂に告げたり春の宵 詠人知らず
③逆接の確定条件(…のに。…けれども。…が。)
汝姿は聖人に似て心は濁りに染めり。 (方丈記)
恋ひ恋ひて告白はせず河豚の黙 詠人知らず
格子どもも人はなくして開きぬ。 (竹取物語)
格子もみな人はいないのに開いてしまったと訳す。
美しくして心は悪魔冬の菌 詠人知らず
「して」は形容詞と形容動詞型の活用語の連用形にまた打消しの助動詞「ず」の連用形に接続します。
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