「俳句文法」入門 (77) 
─── 係助詞「も」について 其の2───           大林明彥

  係助詞「」には並列の用例が少なくない。同じ趣の事柄を並列(…と訳)するのである。「男恥ぢかはしてありけれど…」(「伊勢物語」)
藁屋とけぬ春の雪水原秋櫻子
初花落葉松の芽きのふけふ富安風生
尻を濡らして潮干狩衛藤佳也
 「あれこれ」と類例を明示するのが並列の「」である。風生の句は「」を受ける用言が省略されて体言止めとなり余韻・余情が漂う。同じ例句。
春の海寄す返すただやさし斉藤文々
 強意・感動を表す「」の例もある。
夕焼けて何あはれや船料理中村汀女
雪山のどこ動かず花にほふ飯田龍太
 汀女の句は全面肯定、龍太の句は全面否定を強調している。「何でもまあ…」「どこもまあ…」と訳す。
いくたび離別の寮歌卒業す谷本清流
なく揺るるミモザの香に浸る小林美智惠
 以上の二句も強調。次の二句は添加の「も」である。
十粒ほど庭に撒けり鬼の豆小林黎子
上野山西郷どん冴返る大溝妙子