伊勢物語の面白さを読む(29)2016年12月号
2016年12月1日 古典に学ぶ
『伊勢物語』にはこのような章段を含めた麗しい友との交流を描いた章段が多数あるが、その中でも紀有常との関係は特に親密で、舅と娘婿の関係をはるかに超えた深い友情で結ばれた間柄であったことが想像される。第十六段はそういう関係を鮮明にした章段なのである。
はいかい漫遊漫歩(52)(53) 2016年12月号
2016年12月1日 はいかい漫遊漫歩
急逝の数時間前に筆を置いた文字通りの絶筆を巻末に収めた野坂昭如さん最後の著書『絶筆』(新潮社刊)は、闘病十二年余の間に口述筆記で書き上げた三つの公開用リハビリ日記と九編のエッセイからなる379ページに及ぶ“大作 ”。
俳句時事(175) 作句の現場「深秋の高麗郡」2016年11月号
高麗郡は埼玉県日高町から飯能市にかけての丘陵一帯で、かつて朝鮮から渡来した高麗人が開拓した土地だと伝えられている。7世紀半ば、百済と高句麗が新羅によって滅ぼされたため、数千人が日本に亡命した。その多くは武蔵野に移住し、先に渡来していた高麗王若光によって統治されたと言う。
衣の歳時記(80) 2016年11月号
─股引 ─四季の移ろいの中で、よりはっきりとその気配を感じるのは夏と冬である。ことに冬は、寒さが体に堪える分敏感に反応する。寒さが身に添う11月は、冬の到来を受け容れ、守りに入る時候といえよう。