四季の野鳥 (12)         
 雲雀                     勝股あきを 

 私事だが、私の住む東京の西端八王子の家に十数年前来た当時、一軒先の隣には広い雲雀野があった。二、三年後、そこに小学校が建てられたが、しばらくは毎年その運動場の上辺りに雲雀の声が聞こえ、近くにまだ残っていた緑地に降りていたようだ。また市の北側の浅川や多摩川の川縁の緑地にも雲雀が多数棲んでいたが、開発が進むにつれ住宅地などに変わってしまったため、鳥仲間の嘱目報告が激減している。
 ピーチュル、ピーチュルと鳴くのが揚雲雀で、鳴き止めると一直線に落ちるのが落雲雀ということは皆さんご存じの通り。この鳥は奈良時代から「ひばり」の名で知られており、万葉集や古事記にもひばりが詠われている(鳥名の由来辞典)。ひばりの語源は貝原益軒が「日晴 晴れたる時、高くのぼり鳴く」と述べ、新井白石、大言海も同様でこれが定説だが、幸田露伴、中西悟堂は鳴声からではないかと述べている(前掲書)。
(例句)
雲雀より空にやすらふ峠かな 松尾芭蕉
雲雀発つ世に残光のあるかぎり 山口誓子
雨の日は雨の雲雀のあがるなり 安住敦
初ひばり胸の奥処といふ言葉 細見綾子
揚雲雀落雲雀また揚雲雀 鷹羽狩行
空のあく時を待ちかね揚雲雀 棚山波朗