四季の野鳥 (13)         
 山谷春潮著「野鳥歳時記」に触れて                     勝股あきを 

 著者山谷春潮は、ご存じの方も多いかと思うが、昭和8年頃から俳句を始め「馬酔木」主宰者水原秋櫻子門下に入り、また野鳥は昭和10年頃、中西悟堂(日本野鳥の会の主宰者)という当時の最高の人に師事した人である(以下本稿の内容は全般に亘って冨山房百科文庫「野鳥歳時記」に基づく)。
 「野鳥歳時記」(初版昭和18年)の前書きで春潮は秋櫻子の「筒鳥を幽かにすなる木のふかさ」という句を取り上げて、筒鳥といっても、筒鳥を山で実際に見聞したことのない人にはこの句のよさは分かるまいと当時の人の野鳥についての知識の少なさを嘆いているが、本文では当時の歳時記は野鳥をよく知っている人の目から見ると季語が適切でないとの不満から、著者自身の考えで個々の鳥について、季語はこう変えたらどうかと提案し、両先生もこれに協力されて出来た書である。
 山谷春潮の功績は、当時の歳時記の野鳥の例句を対象に、生態に即して従来の季語を見直し、新たな季語を提起したことにある。春潮は初版の刊行後も改訂の準備を続け、メモも作っていたが、昭和27年春潮の死後、昭和30年に長男の山谷渉氏が父の意向を受けてまとめた改訂版が出版された。現代の俳句歳時記は、程度の差はあれ、この「野鳥歳時記」の恩恵に浴していると言える。
 追伸 本稿を以て1年間掲載致しました「四季の野鳥」は終了します。今後は皆さまからのご要望等を参考に随時掲載することにいたします。これまでのご愛読に感謝すると共に、ご希望の野鳥があれば編集部迄ご連絡願いします。