行く先の決まりてよりの蝸牛
花大根固まり立ちて色尽くす
蕗の葉につれて大きく虫の穴
砂乾く少年の臑浜薄暑
ちぐはぐの太爪翳す藻屑蟹
遠山は切出しのごと春夕焼
失ひし音は戻らず草の笛
どこからも夜鷹の視線独りの夜
初蟬の間断のなき地声かな
梅雨寒の廊下に立つは影ばかり
麦笛の高音は息の続かざり
三分粥を啜りて父の日なりけり