蟇目良雨主宰 作品

薬草のしづかに育つ月の森
妻の墓まだ新しや小鳥来る
母と子と鬼灯ひとつ鳴らしあふ
無花果を捥ぐや厠の手が伸びて
水澄みていよよあれこれ妻のこと
秋蝶の日を吸ひやすき黄色して
刻々と夜の廻りだす鉦叩
実柘榴を割れば思ひ出ぼろぼろと
蓮の実の飛ぶやそれから流離譚
雁渡し来世も妻と約しけり
十六夜の雲出て早く寝てしまふ
封緘に口紅の跡西鶴忌