衣の歳時記
衣の歳時記 (93) 2017年12月号
赤子や幼児を背負ってその上から羽織るやや大きめの半纏の「ねんねこ」。子供を庇護し防寒を兼ねる。綿を入れて広袖にし、衽を付けて前を合わせる。今日ではほとんど目にすることはないが、懐かしい装いの一つである。副季語は「ねんねこ半纏」「負い半纏」「子守半纏」「亀の子半纏」。
衣の歳時記 (92) 2017年11月号
着物と襦袢の間に着る防寒用の「胴着」。大抵は真綿を薄く伸ばして綿入れに仕立てる。「胴衣」ともいう。素材は木綿、滑りの良い絹、縮緬など。黒の掛け襟を付けることもあった。胴着は江戸時代に作られたもので、用途によって色々な形になる。袖がなく、主に羽織の下に着ていたものが「袖無胴着」。「筒袖胴着」は袖が筒形で肌着として着用。真綿だけで作ったものは「負真綿」と呼ばれた。いずれも副季語である。
衣の歳時記 (91) 2017年10月号
秋になって着る服装の総称である「秋の服」。夏服の薄い素材や色合から、落ち着いた趣のものへと変わっていく。生地は保温性のある布が選ばれる。夏と冬の間に着る合着ともいわれ、着る期間はそれほど長くはない。副季語は「秋服」「秋の帷子」。
衣の歳時記 (90) 2017年9月号
9月の1日から3日間、富山県八尾町で行われる「風の盆」。町中が仕事を休み、雪洞を灯し、夜を徹して「越中おわら節」を歌い踊る。盆踊でも神事でもない特異な情緒あふれる地域芸能である。副季語は「おわら祭」「八尾の廻り盆」。
衣の歳時記 (89) 2017年8月号
海やプールで泳ぐ時に着る「水着」。かつては木綿、毛織物、絹が使われたことがあったが、今はポリエステルなどの化学繊維のものが主流となっている。一般用と競泳用があり、女性用はとりわけカラフルで、デザインが豊富。副季語は「海水着」「海水帽」。
衣の歳時記 (88) 2017年7月号
夏の家庭着として親しまれている「甚平」。羽織ほどの丈で、前を着物合わせにして紐で結ぶ。木綿、麻、縮などで作り素肌に着る。老人や子供に向いている。副季語は「じんべ」「袖なし」。
衣の歳時記 (87) 2017年6月号
6月から7月にかけて薊に似た鮮やかな黄色の花を咲かせる「紅の花」。開花して数日すると赤味がさしてくる。花から口紅や染料、顔料を作り、種子は食用油となる重宝な植物である。「紅花」「紅粉花」「紅藍花」とも表記され、古名の「末摘花」と共に副季語。
衣の歳時記 (86) 2017年5月号
「産着」。季語ではないが、人間にとって記念すべき衣服の一つである。この世に生まれて初めて着る衣。清潔な晒木綿やガーゼで作られることが多い。襁褓と共に、誕生の喜びを込めて用意される。「産衣」とも書く。百日過ぎのお宮参りの晴着を含める場合もあるが、「初着」として区別するのが良いだろう。
衣の歳時記 (85) 2017年4月号
冬の北風が徐々に東風、南風に変わり暖かくなる四月。日本列島を桜前線が北上し若草が萌え立つ美しい季節である。京都は様々な神事や祭で賑わい、春爛漫を迎える。
衣の歳時記 (84) 2017年3月号
昼と夜の長さが同じになり、最高気温の平均が15度前後(東京)に落ち着く3月。明るくなった日差しの下、あちらこちらで卒業式の光景が見られる。今正に巣立とうとしている若者を見ていると、思わずエールを送りたくなるのである。
衣の歳時記 (83) 2017年2月号
─ 角巻 ─ 1月に次いで雪の多い2月。太平洋側では日脚が伸びるのを実感できるが、北海道や日本海側は降雪が続く。人々は降り積もる雪の中で淡々と暮らし、遠い春を辛抱強く待つのである。
衣の歳時記 (82) 2017年1月号
─ 毛糸編む ─ 年初めの1月。多くの人が家族揃って正月を寿ぐ格別な月である。月半ばまでは様々な行事がありめでたい気分に浸るが、厳寒期を迎え、暖房の効いた家の中で過ごすことも多くなる。