2020年7月(通算492号)
2020年7月●通巻492号
2020年7月1日 2020年
令和 2 年 7 月号/目次 7月の俳句 ……………………………… 夏痩せ〈主宰近詠10句〉……………………… 棚山波朗 晴耕集 …………………………… 同人作品Ⅰ 棚山波朗選 雨読集 …………………………… …
自由時間 (85) 2020年7月号
2020年7月1日 自由時間
いま、アルベール・カミュの『ペスト』が読まれている。ペスト菌を新型コロナウイルスに置き換えると、世界各地の現状を描写したかと錯覚するほどだ。明けても暮れても新型コロナウイルスのニュースがあふれている今、思い出した作品がある。トーマス・マンの『ヴェニスに死す』である。『ヴェニスに死す』に登場する疫病はコレラである。
曾良を尋ねて(131) 2020年7月号
2020年7月1日 曾良を尋ねて
将軍交代による新しい方策が実行されているか否かの今回の巡見使の一行は3月1日に江戸を出立し筑前の国門司に到着したのは4月2日であった。すでに60を越えていた岩波庄左衛門正字にとっては厳しい旅となった。福岡藩での調査は順調に進んだが、対馬藩においては長年常態化していた密貿易に対する詮議役として岩波御用人があたることとなった。
古典に学ぶ (84)源氏物語2020年7月号
2020年7月1日 古典に学ぶ
帝と桐壺更衣の今生の別れの場面のまなざし① 愛の証である源氏誕生から3歳の春、その袴着が終わった途端、『源氏物語』は早急に桐壺更衣の死を描き出す。その場面は、何度読んでも緊迫した状況と二人の愛情の吐露が見事に融和し、紫式部の稀有な才能を思い知らされる。
はいかい漫遊漫歩(138)(139)2020年7月号
2020年7月1日 はいかい漫遊漫歩
うちの子でない子がいてる昼寝覚め 米朝(俳号八十八) この句は、落語界ではただ一人、文化勲章受章者の桂米朝さんが平成17年7月の東京やなぎ句会で詠んだものである。俳号の八十八(やそはち)は、言うまでもなく米朝の上一字を分解したもの。平成27年で46年の句会歴を誇る東京やなぎ句会の創設以来の唯一の関西同人だったが、90歳を目前に同年3月、亡くなった。 交(さか)る蜥蜴くるりくるりと音もなし 加藤楸邨 夏の季語の蜥蜴を詠んだ句は数多い。だが、今日では滅多に“その ”現場に居合わせ、目撃するチャンスのない「貴重な出逢い」に遭遇した幸運な(?)写生句が掲題句だ。 われわれが目にするニホントカゲ(トカゲ亜目トカゲ属)の交尾期は4月から5月で、繁殖齢(生後2~3年)の蜥蜴の雄、雌が出逢うと互いに頭部を愛咬し、合意となると楸邨句の描写のようにユーモラスな交尾が始まる。
韓の俳諧(17)2020年7月号
2020年7月1日 韓の俳諧
韓の俳人が多数投句していた『俳諧鴨東新誌』は、市川一男によれば内容が貧弱で、懸賞俳句や聴秋の自己宣伝などを載せた粗末な冊子であるとされ、三森幹雄が『俳諧矯風雑誌』を創刊し、俳壇の体質を矯正しようとしたと論じている。京都の新興宗匠の上田聴秋と『俳諧鴨東新誌』を討ち果たすために、『俳諧矯風雑誌』という刺客を差し向けたような市川の論調だ。しかし、『俳諧矯風雑誌』は3年で廃刊となり、『俳諧鴨東新誌』は刺客をものともしなかった。